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. . 「……イテテ。しくじった」 わき腹に走った痛みに、思わず漏れたうめき声。 ちらりと振り返った背後の森には、点々と赤い痕が残っている。 「モンスター達が寄ってくる前に、皆と合流…せめて開けた場所までいかないと」 呟いた拍子に服から赤いしずくがこぼれ落ちて、また一つ足元に染みを増やした。 . . ***ゆく先に、光 .. . 交易の帰り道だった。 戦い慣れたメンバーが揃っていたのでさして慌てる事態でもなく、各々が確実に敵の数を削っていく。 . .「落ちた先が岩場じゃなくて枝葉を張った木々の上で助かったけど、その後が悪かったなぁ」 一緒に落ちたモンスターがクッション代わりになってくれたお陰で擦傷と軽い打撲で済んだのは、運が良い方とは言えないセスにしてみれば格段な幸運だったと言えよう。 ――と、思ったのも束の間。 血の匂いをかぎつけたモンスターが出現し、再び戦闘開始。 .「崖に気付かず足は踏み外して、怪我をして……船に戻ったら怒られるだろうな。運が良い日なんて一瞬でも思ったのは間違いだった」 溜息混じりに呟いて、側の木に寄りかかる。 . +++ . 「皆は無事だったかな」 一人を欠いた位でモンスターに遅れとるメンバーでは無いから、戦闘を終えて今頃は崖を落ちた間抜けな人間の捜索を始めている頃だろう。 溜息にあわせてずくりと傷口が痛みを訴える。 ―――眠ってしまえば楽かもしれない… モンスターの徘徊する森でそれは不味いだろうと頭の端っこで理性が訴えるが、血の足りない頭は誘惑に傾き、次第に瞼が落ちていく。 . と。 突然面をよぎった光に、セスはびくりと肩を揺らして目を開いた。 . 「 あ…。 木漏れ日?」 風が、頭上を厚く覆う枝葉をほぐして、隙間から陽光を導き入れたらしい。 だらりと伸ばしたつま先の上に落ちた光が、誘うように輪舞を描く。 思わず立ち上がったセスの頭上でくるくると廻っていた木漏れ日は、枝葉を鳴らして吹き抜けていた風が遠ざかると共に唐突にぱっと拡散して――消えた。 . 再び戻った、仄暗い世界。 . 先っきまでの眠気が嘘のように、目が冴えている。 光の消えた向こうを凝視していたセスは、ゆっくりと右足を前に踏み出した。 「――帰ろう」 . +++ . 足が本来の働きを思い出してくれたのは助かるが、動きは緩慢で森を抜けるのに何時間…何日かかることか。 だけど、あと数歩。 いつだったか、怪我人は動かないで大人しく隠れて待っていろと仲間達に説教と拳骨(ケガ人だというのに)をもらったことがあったが、今回も懲りずにセスは帰るために歩みを止めなかった。 怪我を負っている今この時は叫びだしたいほど傷が疼くのに、仲間達に会えた瞬間、不思議と痛みは霧散し歪んでいた顔にも思わず笑みが浮かぶのだ。 一つ深呼吸した後、セスは時おり光を零す頭上を見上げた。 . いつか、誰かが軍の先頭に立つセスの事を「光」だと言った。 . ―― 違う。自分が「光」なのではない。 ―― 本当の光は、 ―― 自分が前へ進めるのは…… *** 木々が途切れて、目の前に視界が開ける。 . . .「「 セス!! 」」 . . ―― 暗い闇を抜けたその先にいつも待っている、光 ―― 仲間たちがいるから、 前進する .. . *** *** ゆく先に、光...END. . 2008/05/22 |
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