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夢〜2〜*** *** *** 「 はい? 」 *** *** 間近から返ってきた返事に、急速に意識が引き戻される。 ぼんやり開いた目に映ったのは、木造りの床や壁。 *** **** は振り向いた―― 「……!」 息を呑んで甲板から跳ね起きる。 「うわっと」 間近で上がった声にぎょっとして振り向くと、すぐ隣に、起き上がった自分をよけるように体をのけ反らせたセスが居た。 「――あ」 咄嗟に答えを返すせず、呆然と彼の顔を見た。 *** 幸せな 夢を、見ていた。 平和なオベルの地で、生誕祭の日に 妻がいて、娘がいて、息子がいて、 ………息子? あのとき振り向いた彼に自分が呼びかけた名は―――― *** 「リノさん?」 怪訝な眼差しをしていたものの、ありがたい事にそれ以上突っ込んだ問いを重ねてくることはしなかった。 「そういうやお前こそ、俺に用でもあったのか?」 思い出したようにうなずいて、セスは腕に抱えていた袋をがさごそと開け始めた。 セスの手によって広げられた布の全形を見て、もう一度、言葉を失う。 ――――オベルの旗 「今日がオベル生誕祭の日だと、フレアが話していたので」 戦争も終盤に差し掛かり激戦の最中、国を挙げた祭りだからといって軍の首脳部にいる自分が戦線を離れられるはずも無く。今年は公的な催しは行わないことに決めた。 「この船に乗っているのはオベル国の人たちだけじゃないから、軍を上げてお祝いするわけにはいきませんが、贈りものをするくらい構わないでしょう?」 ――エレノアさんに知られるとうるさそうなので、実は内緒なんですけどね 大人の目をかいくぐって悪戯を成功させた子供のように、セスは楽しげに笑ってみせた。 「オベル王である貴方にお渡ししておきます」 渡されたオベル国旗を、ぐっと握り締める。 「では、僕はまだ仕事が残ってるのでこれで…」 きびすを返して立ち去りかけたセスの腕を、思わず掴む。 「リノさん?」 何かを言いかけて口をつぐんだ青年が左手をぐっと握り締めたのを、見て見ぬふりをして続ける。 「平和の立役者であるセスに、是非やってほしい」 最初は戸惑っていたセスにも真剣さが伝わったのか、居住まいを正してあらためてこちらを向く。 「まだ、終わっていないですよ」 最近、ふいに見せるようになった不敵な笑みにのせて、セスは言った。 「――いいですよ」 セスの首根っこを捕まえ、お返しとばかりにがしがしと髪の毛をかき混ぜてやる。 *** 突き抜けるような青天の日だった。 **** Next> |
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