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  〜シュリ&セス〜***


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――こんな夢をみた。

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 旅の途中、船に乗るためにやって来た港町で

 僕と親友とセスが、ふざけ合いながら 波止場を歩いている

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 毎朝の習慣である鍛錬の為に浜辺へ降りてきたセスは、朝焼けの下に先客を見つけて、おやっと眉をあげた。

 「シュリ君。今日は随分と早いんだね」

 珍しくぼんやりとしていたらしい少年は、一拍置いて振り返った。
 セスの存在を目に映しながらも、どこか茫洋としたままのシュリに、首を傾げる。

 「夜更かしでもしていたのかい?」
 「……夢を、見たんだ」
 「夢?」

 シュリは昇り始めた太陽を映しこんで暁色に染まった瞳を、ゆるりと海へと戻した。

 「僕と親友とセスが、一緒に旅をしていた」
 「シュリ君と……君の親友と、俺の三人で?」
 「僕とあいつ、僕とセスならまだしも、三人が一緒に旅をするなんてありえない組み合わせの筈なんだが…。
 夢の中では、三人でいる風景にまったく違和感を感じていなかった――

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 ――親友はこの群島を旅したことがあったと言っていたから
 
   もしかしたらその想像と、今自分が旅する姿とがまざりあって、夢の中に出てきたのかもしれない
    群島を巡る今回の旅の行く先々で
    この海を旅していたというあいつの姿を思い浮かべてきたから……

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 「あいつは相変わらずの調子で、次に乗る船に皆を先導していたんだ。 セスはあいつに引きずられていて、僕はそれを笑って見ていて…そんな夢だった」
 「――奇遇だな。俺も昨日夢を見たんだ。 俺と昔の仲間とシュリ君が三人で旅している…」

 「ありえない、夢」 ポツリと零れた言葉に、シュリは目を瞬いて隣を振り向いた。

 「彼は、あまり笑ったりする人ではなかったんだけど、夢の中ではびっくりするくらいに陽気な笑顔を見せていた。
 ああ、こんな表情も出来たんだ、って驚いた。……のは、目が覚めてた後でね。
 実は俺も夢を見ていたときには、三人で一緒に旅をしている事にも、彼があんなにも明るく笑っている事にもまったく違和感感じていなかったんだ」

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 ――自分と彼、 彼とシュリ、 シュリと自分
 
   ごく近くに敷かれた三本の線は、しかし交差することはなかった
 
   3人で会することはありえたかもしれないけれど、今や叶わぬ……夢

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 「そういえば…」
 呟いて、セスはくくくっと笑いを噛み殺した。

 「セス?」
 「いや、思い出し笑いをちょっとね。 夢の中で俺たちは船に乗るところだったんだけど、『彼』が渡し板を踏み外して海に落ちそうになって…」
 「――っそれは、本当にずごい奇遇だ。 僕の夢の中でも、『親友』は船に乗り移り損ねて海に落ちそうになったんだ」
 「ぶっ!!」

 今度こそ堪えきれずに、セスは吹き出した。
 腹を抱えて笑い出したセスに、さすがにシュリも怪訝な表情になる。

 「そこまで笑うことだったか?」
 「だって――

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 ――そんな所は、150年経っても『相変わらず』だったんだな。 ……テッド

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 呟きは打ち寄せる波音にかき消されて、シュリの耳に届くことはなかった。

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 ――こんな夢をみた

 戯れ調子のまま船に乗り移ろうとして渡し板を踏み外したテッドを、
 自分ととシュリの二人がぎりぎりで掴まえて 引き上げてやっている

 俺と、テッドと、シュリと。

 ついぞ三つの線が交わることはなかったけれど
 150年たった、今 線は結ばれたのかもしれない

END*****


2006/03/03・・・・・・・・・・

   










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