* * 「うん。君に出来るって言われると…なんだか本当に出来そうな気がしてくるよ」 ** * * * 力の唄** * +++ 1 +++ * 「……本当に、“クエストランクC”だったのかな、キリル君?」 * 『近海を荒らす海賊の小集団をこらしめてほしい』という依頼内容を任された筈だったが、 * 四方に広がる大海と、その三方に立ちふさがる海賊船団。 * 「集団の規模が“人”ではなく“船”単位とは、さすがに話が違いぎるんじゃないかい…?」 セスは、少しばかり遠い目になりながら呟いた。 * 「敵が3艘も船を出してくるなんて情報と違うよっ。 私たち、たば・・た、ば……あー」 ついさっきまで『海賊退治かぁ。腕が鳴るね! セスとポーラとあたしの3人だけど、元騎士団の力を見せてやろうよっ』と、はしゃいでいたジュエルが、頬を膨らませて憤然と言った。 「どうやら、厄介ごとを押し付けられたようですね、セス」 ポーラは肯いてから、小さく眉を顰める。 「彼は熱血漢に走る部分がある一方でちょっとのんきなように見えます。 依頼人の言葉を疑わず、背後関係を調べなかったのではないでしょうか」 交わされる会話の中にさらりと混ぜ込まれた単語たちに、ジュエルは今頃くしゃみでもしてそうな人物にちょっぴり同情を感じた。が、彼の手落ちで危機的状況に陥っているのは自分も同じなので、フォローの言葉を挟むことはしなかった。 * + + + * 『頼みたいことがあるんだ!』 待ち構えていたキリルにガシっと両肩を掴まれ、意気込み一発かけられた突然の言葉。 隣を歩いていたジュエルとポーラも、呆けた顔で固まっている。 肩を固定されているため、真正面に向きあうことになった金色の瞳と見詰め合うこと1分。 『…頼みごと?』 キリルは、思わず断るのを躊躇うような邪気の無い、懸命な顔で一息に言う。 『セスは海上の戦闘に慣れていると聞いた。 ランクはそんなに高くは無い依頼だけど、きっと僕がやるよりセスの方が確実に依頼に答えられると思う』 己の足りない部分を恥じて隠す様子も無く。海上の戦闘では自分より秀でるセスに頼みたいと、当たり前のように言った彼。 素直で物怖じしない気質は、対する者にすがすがしさを与えるものだ。 ―――そんなところはあの頃と変わっていないな… 幼い頃の彼との邂逅を思い出して、セスはクスリと内心に笑みを漏らす。 * + + + * そして、海賊の船団に囲まれる現在に至る。 「今更誰の所為だということを追求しても仕方ないよ、ジュエル」 爽やかに見えるセスの笑顔の裏で何かがゆらめくのを見た気がして、ジュエルはうっと詰って一歩引いた。 「結構逞しくなったよね、セスって」 生い立ちと、従者的な身分が彼をそうさせたのだろうけど―― 「騎士見習いの頃、落ち込んだり行き詰まった時にセスから言葉をもらうと、不思議とできちゃいそうな気になったんだよなぁ、私!」 『スノウもそれで随分助けられてたよね』とジュエルが懐かしそうに言えば、 * * 「帰ったらみんなでカニ晩餐をしよう! ジュエル、ポーラ」 「……セスの我が侭って
『カニ晩餐』? 」 彼らが現在置かれている状況は、一応切迫している筈なんですけどね(苦笑)。 微妙に酷い扱いしてますが…キリルくん好きですよっ(笑)。 セスが文中で言っている“子供時代のキリルとの邂逅”は、 2≫****** |
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