* 「あんたが皆を守っている『力』は、なにも剣や魔法や 本当に皆の力になってやりたいのなら 陰で一人、剣や魔法の鍛錬に励むよりも 時には“言葉”が、剣や魔法以上に『力』になる事だってある」 * * * 力の唄** * +++ 2 +++ * 「セス、この後はどうするつもりですか?」 三人は軽口を交し合っているが、 * 逃げるこちらの船を付かず離れず追走してくる、海賊船。 三艇の海賊船は上手く連携をとって退路を塞ぎながら追走し、追い立ててくる。 「どこかで一戦は交える事になると思う」 二人の言葉に、セスは思わず苦笑を漏らした。 * そうなのだ、今回の船―― 用意された船を見たセスは唖然とした。 『……僕はこれから何をしに行くんだったかな?』 ギルドが仲介で用意してくれる船とは比べ物にならないよ。などと暢気な感想をのたまうキリルをおいて、慌てて手回しをした人物を捕まえ、どういうつもりかと問いただせば―― 『船もたまには動かしてやらんと傷むし、使わなければ勿体無いだろう。 豪快に背を叩かれて船上に放り込まれ、(乗船を躊躇っていたら、本当に投げ込まれた…)そのまま出港と相成ったのだった。 「あの人も何を考えているんだ」 呆れ返って言葉もないセスだった。 「――勝敗はゼロではない」 この場合の“勝ち”は、海賊船団から“逃げ切れた”ということだ。 * * 「かなり統制のとれた動き。彼らはどこかで訓練を受けた経験を持つ、軍隊崩れの者たちかもしれない……」 微細な動きも逃さぬようにと見つめていたセスの頭に、ふいに疑問が湧き上がる。 「――おかしいな」 考え込むように視線を下げて呟いたセスの言葉に、ポーラとジュエルは顔を見合わせた。 「言われてみれば…そうだよねェ」 * キリルがセスを呼び止めたのはキャラバンの側だった。 ―――海賊の話題が出た時に、シグルドたちは何か言おうとしていなかったか? ふと視線を感じてセスが海賊団の方へと目を向けたとき、彼らは何かを言いたげに口を開きかけた。…が 気になったが、話しの途中で追うことも出来ず。 記憶を手繰り寄せたセスは、僅かに眉を顰める。 ―――彼らは海賊たちについて知ってたんだ。 特別隠すような事とも思えない。 どこか引っかかりを覚えつつ。 「キリル君を介して再会してからこのかた、キカさんと話していると、時々違和感を感じるのだけどなぁ。 何だろう…」 * 「え、ええ〜?なんでェ!?」 * 突然あがったジュエルの素っ頓狂な声につられて、内の思考に潜っていたセスは我に返る。 優美な船体に波を砕かせ、飛沫をたてながらこちらに近づいてくる一艘の帆船。 「援護に来たぞ、セス」 波を砕く船の揺れをものともせず、悠然と甲板に立つ……キカだった。 * 06.8.15 |
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