「お前は、他人に対してはあんなにも器用に言葉を与えられるくせに、 なんで……自分自身のことになると、鈍いんだ?」 * * * * 力の唄** * +++ 3 +++ * 口をぱくぱくとさせるジュエル。 驚き一過後、合点がいったっとばかりに、深く、ふかく溜息をついた。 * 「やはり、今回の海賊の事を知っていたんですね。 事前の“忠告”ではなく、グリシェンデ号をひっさげ“援護”に現れたキカ。 後ろに控えるハーヴェイは、ハトが豆鉄砲を食らったようなセスたちの様子にしてやったりの得意顔だし、隣のシグルドも幾分申し訳なさそうにしているものの、相棒と似たりよったりの表情である。 「アレは最近出てきた海賊団なんだが、人数と物量に物を言わせて勢力を誇示して海賊道義も持たない連中でね。丁度五月蝿く思っていたところなのさ。 ―――してやられたっ キリルの話を聞いた時から、キカはギルドの依頼に便乗してセス達の力も借り、目障りな海賊団を掃討するつもりだったのだ。 「僕にギルドの依頼を受けさせて、共に戦う状況を作る。 昔の仲間たちの中には、戦いの表舞台からようやく離れられたセスの心情を慮って、彼を戦闘の矢面にひっぱり出す輩を快く思わない者も多い。 「事の流れに任せてみたら意外に簡単だったな。 お前は、結構キリルの“お願い”に弱いだろう?」 ちょっとばかり恨みがましく言ってみれば簡単に切り返されて、セスは撃沈した。 * ―― あ… * 「もしかして。 あの戦いの後、僕が死んだことになったまま音信不通にしていたのを怒っている……の、か?」 ぼそりともらした独り言は、風に乗ってキカの耳に届いたらしい。 「何のことだ?」 いつもと変わらぬ涼やかな表情にみえて、醸し出す空気は氷点下の剣呑さを帯びている。 「今のって、クリティカル・ヒットってやつじゃない?」 隣でひそひそ言い合うジュエルとポーラに言葉を返すことも出来ずに、セスは背筋に冷たい汗をだらだらと流していた。 * 「海賊団が…!」 船の見張り役が上げた叫びに我に返って、振り返る。 後方では、名高きグリシェンデ号の登場に浮き足立っていた海賊団たちが落ち着きを取り戻したのか、こちらに進路を向け動き始めているところだった。 「来るか」 敵の行動を見極めるように、セスは目を細める。 「共同戦線の艦隊指揮はお前が執れ」 驚いたように振り返った海色の双眸を、キカの瞳が射抜くように見返した。 * 06.8.20** |
*
SEO | [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送 | ||