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*** *** *** *** 戦いが終わり 群島諸国に平和の曙が昇り始めた その時 一人の青年が――海へと還っていった *** ** *** *** *** トビラ島**** *** +++ 1 +++ *** 「 “騙り” が現れた?」 訪問者が開口一番に発した言葉を鸚鵡返しに呟き、キカは形の良い眉を上げた。 「ああ」 海賊島のキカの自室。 * 今や群島諸国代表ともいえる立場である筈のオベルの王は、街の者と変わらぬ普段着でキカの前に座っている。飾らぬ雰囲気も“共闘”したあの当時のままだ。 しかし、その顔に浮かぶ表情はいつになく厳しかった。 「ここ最近、な。 リノは大げさに肩を竦めてみせた。 「目撃した者たちが言うような大きな船だったら、造船中に噂の一つでも漏れる所だが、そんな話は一つも聞いたとがない。 間髪いれず返せば、リノは目を泳がせる。 「別に悪行をはたらいている訳ではないのだろう、その船は」 正面に戻ってきたリノ瞳に思わぬほどの真剣な光を見つけて、キカは訝しげに眉を寄せた。 「ヒーローのつもりか知らんが、善行をしている間はとやかく言うつもりはないさ。……だがよ」 心情を覆い隠すように細めた目は、キカに向けられながら、どこか遠くを見つめている。 「目撃した者達の話によると、自分たちを助けてくれた巨大船を指揮していた船長はまだ歳若かったらしい」 卓上で燃えるランプの焔が、リノの瞳の中でゆらりと揺らいだ。 「そして……」 彼が、一節ごと噛み締めるようゆっくりと発した言葉に、キカは目を見開く。 *** *** 「―――赤いハチマキをした、海色の瞳の青年、だったそうだ」 *** *** 06.8.3*** 2≫****** |
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