**

 

***

***

***

***

戦いが終わり 群島諸国に平和の曙が昇り始めた その時

一人の青年が――海へと還っていった

***

**

***

***

***


ビラ****


***

+++ 1 +++

***

「 “騙り” が現れた?」

訪問者が開口一番に発した言葉を鸚鵡返しに呟き、キカは形の良い眉を上げた。

「ああ」

海賊島のキカの自室。
事前の約束も無く訪れたリノは、堅い声で肯いた。

今や群島諸国代表ともいえる立場である筈のオベルの王は、街の者と変わらぬ普段着でキカの前に座っている。飾らぬ雰囲気も“共闘”したあの当時のままだ。

しかし、その顔に浮かぶ表情はいつになく厳しかった。

「ここ最近、な。
“クールークの侵略を退けた群島諸国の象徴たる『英雄船』”にそっくりな巨大船を見た、という者たちが相次いでいるんだ」
「……あのとき“彼”の指揮した、本拠地船の事か?」
――そうだ。
しかも魔物に襲われた船や嵐で転覆しそうになった船を助けたりと、『英雄さま的活動』をしているらしい」
「船はオベルに保管されていた筈だろう?」
「勿論、ちゃんとあるさ。だから別の船だ」

リノは大げさに肩を竦めてみせた。

「目撃した者たちが言うような大きな船だったら、造船中に噂の一つでも漏れる所だが、そんな話は一つも聞いたとがない。
情報収集に当たったミズキ達も、めぼしい情報を得ることは出来なくてな。おかしな話しだぜ」
「お前も他国の目を欺きながら、秘密裏に巨大な船をつくっただろう」

間髪いれず返せば、リノは目を泳がせる。
特にそれ以上突っ込むつもりのないキカは、スッと足を組み直してから話の先を促すように顎をしゃくった。

「別に悪行をはたらいている訳ではないのだろう、その船は」
「そりゃそうだがよ。何処の誰の意思、目的の元で造船されて航行している船か分からんのは不気味だ」
「最近の情勢から鑑みて、どこかの国がわざわざ巨大船を作ってまで動かす意味は無いように思うがな…」
「兎に角情報が足りなさ過ぎる。
――
まあ、それはいいんだ」

正面に戻ってきたリノ瞳に思わぬほどの真剣な光を見つけて、キカは訝しげに眉を寄せた。

「ヒーローのつもりか知らんが、善行をしている間はとやかく言うつもりはないさ。……だがよ」

心情を覆い隠すように細めた目は、キカに向けられながら、どこか遠くを見つめている。

「目撃した者達の話によると、自分たちを助けてくれた巨大船を指揮していた船長はまだ歳若かったらしい」

卓上で燃えるランプの焔が、リノの瞳の中でゆらりと揺らいだ。

「そして……」

彼が、一節ごと噛み締めるようゆっくりと発した言葉に、キカは目を見開く。

***

***

―――赤いハチマキをした、海色の瞳の青年、だったそうだ」

***

***


06.8.3***

  2≫******

 

***

***

 

***

***

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送