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*** *** *** ――― 覚えていてほしい 僕は、 いつだってこの海から 皆のことを・・・ *** ** *** *** *** トビラ島**** *** +++ 2 +++ *** ガッ。 * 「……どこのどいつだか知らねェが、っざけんなよ」 振り返った先。 「“騙り”なんて阿呆な真似をしている野郎が出た…だって?」 リノの話を伝えた途端に剣呑な気を宿した彼は、イラついた目で鋭く海を睨みつけた。 * 『お前らも何か情報を得たら教えてくれ』 いつもは血気盛んな相棒を諌めるシグルドも、今日は静止の声を上げることをしない。 「リノの話だと、悪行を働いているわけではなく、むしろ人道的行動をしているそうだがな」 ガツっ!! 堅く握り締められたハーヴェイの拳が、再び側のマストを殴りつけた。 ** * キカは小さく息を吐いて、荒れるハーヴェイから凪いだ海へと目を戻す。 戦乱の海原をこのグリシェンデ号で駆けたのは、まだほんの一年前のこと。 しかし“ 彼 ”と再び合間みえることは、決して無い。 群島諸国連合軍の中核となった本拠地船の上で。 彼を弟分のように接していたハーヴェイやシグルドは、最期の衝撃と喪失感を払拭しきれず、いまだ心に残している。 * ふと、 情が薄かったのか?と自問して、すぐそれは違うと頭を振った。 多くの者たちと出会い、影響し合い、綾織り上げられてきた人生のなかでも、 ―――それなのに。 何故私は、左程に喪失感を感じていないんだ? エドガーを失った時と同じように胸に空虚を生み出しながら、 * ふぉっ 背後から、髪を巻き上げるように立上った風が、首元すり抜けて海へと駆けていく。 「……ああ、そうか」 キカは、懐かしい感覚に思い至って眼を細めた。 「こんな“風”を感じたとき――」 彼と並んで剣を振るったときに生まれる旋風に似た―― * 風を追うように動かした視線の先には、ただひたすらに広く澄みわたった、碧い海。 「この “海の碧”を目にしたとき――」 穏やかに笑ったときに彼の瞳が湛える色に似た―― ** 胸に出来た空洞が 埋まるような気がするからだ――― * * 06.8.8*** |
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