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夢〜1〜*** *** *こんな夢をみた。 *** ザザーン… *** 遠くに広がる浜辺から 街を見下ろす丘の上にポツリと一本立った大きな椰子の木陰に、俺は寝っころがっていた。 *** *** *** 「…さ…。おと……さん」 自分の名を呼びながら近づいて来る気配に、眠りの淵にあった意識がゆるゆると浮上する。 「なんだ、フレアか」 目の前に立っていたのは、怒りで頬を上気させたフレアだった。 何でこいつは怒っているんだ? 目覚めたばかりのぼんやり霧がかった頭のままで、周囲をぐるりと見回した。 *** ふと、すました耳に聞こえてきたのは、祭り囃子と陽気な喧騒の欠片。 *** ―――ああ。そうか今日はオベル国生誕祭だ * 「もうすぐ式典がはじまる時間だっていうのに行方を眩ますんだから。 *** くすくす ****** 「でもこの人は、本番に強いから」 大丈夫だと思うけれど、 と。 呆けるけている自分を、2人は不思議そうに見た。 どうしたの、お父さん?鳩が豆鉄砲食らったような顔をしているわよ」 *** この光景の、どこに おかしいところがある? *** ふぅ、と肺に詰った息を吐き出す。* 「『には』って、お前なぁ。何か含んでないか、その物言い?!」 ころころと少女めいた仕草で笑われて、するりとはぐらかされた。 くすくす笑いを漏らす二人の女性に不機嫌な視線を返してから、空を仰いだ。 遠く、水平線と並ぶように浮かぶ雲以外、空をさえぎるものはない。 ―――今日は、オベルが最も輝く日 絶好の祭り日和の中、人々の盛り上がりは最高潮に達している。 ―――何て、優しく 幸せな風景か。 自分の隣には、呆れた風を装いながらもどこか楽しげに笑う愛しき娘がいて、穏やかに微笑む愛しき妻がいて、 そして…… *** 「早くいきましょう、あなた。 旗持ちのあの子も待ちくたびれているわ」 木陰の中から、つと目をうつした2人の視線を辿れば、眼下の海辺へと行き着く。 遠目にも鮮やかな赤いオベル王族服と、彼が支える背丈よりも高いポールの先に括り付けられた国旗が、波の上を駆ける風を受けて大きくたなびいている。 正装が濡れるのも気にかけず、遠浅の海に膝まで入って波と戯れる姿を目に収め、自然と頬が緩んだ。 ** いつのまにか、オベルの旗を一人でも支えられるまでに成長した、もう一人の自分の愛し子。 *** 「なぁに。あいつは海に浸からせときゃそれだけで機嫌が良いんだから大丈夫だよ」 再び女性二人に笑われては、情けなく眉尻を落とすしかない。 「さあ。いくら心地よいからといっても、あの子を待たせたままいつまでもここに居るわけにはいきませんよ。そろそろ行かないと」 未練を断ち切るように一つ伸びをして、木陰から照りつける太陽の下へと足を踏み出した。 軽い違和感と眩暈を覚えた頭を手で支えながら、振り払うように海とあいつの後姿に目を向けた。 *** 海辺と丘とは離れていて声が届くような距離でもなのに。 偶然か。 風が、こちらの気配を伝えたのか |
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************************************** 「セス!」 |
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